プレイブックと《専門ムーヴ》

実のところ『七不思議(仮題)』のプレイブックは、ほぼ『Paranormal Inc.』のプレイブックの引き写しであったりします。

  • 理系部の子=The Scientist/科学者
  • 帰宅部の子=The Skeptic/懐疑主義者
  • 文系部の子=The Medium/霊媒
  • 運動部の子=The Intern/実習生
  • 勉強家の子=The Bookworm/本の虫
  • 不思議の子=The Ghost/幽霊

それは……あまりにもあれですので、実際に書くにあたって手を入れることにしました。〔特徴〕には明確に痕跡が残っていますし、そのままな《専門ムーヴ》もあるのですが、まず考えたのは、名称の整理で、理系部と文系部だと学部っぽいので理系部と文化部に変更し、また勉強家をより学校にあわせるために特進科にしました。その上で、運動部・文化部・理系部の3つを個人的に基本と呼称することにしました。「妖怪博士」井上円了の哲理門の両脇には、心の世界の不思議を表す「幽霊」と、物の世界の不思議を表す「天狗」をそれぞれ象った木像が置かれています。それをイメージして、運動部の《専門ムーヴ》には天狗が、文化部の《専門ムーヴ》には「幽霊」が、理系部の《専門ムーヴ》には「妖怪博士」が住んでいます。

また残りの3つのプレイブック、特殊枠について考えた時、不思議の子は《夜遊び》時に補導されないのを実装するために《専門ムーヴ》に落とします。そこから、特殊枠はそれぞれ《発見》や《挑戦》以外の《一般ムーヴ》の効果にアクセスできるようすればいいんじゃないかと考えました。

  • 帰宅部の子>《未知との遭遇》
  • 特進科の子>《こんな噂、知ってる?》
  • 不思議の子>《夜遊び》

そして、そこから逆算し「理系部の子=The Scientist/科学者」が持っている《解明》へアクセスする《専門ムーヴ》は《一般ムーヴ》に格上げして、理系部の《専門ムーヴ》を新規に考えることにします。また「文系部の子=The Medium/霊媒」の《未知との遭遇》へのアクセスを帰宅部に移したり、と色々と《ムーヴ》の位置はいじっています。

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あと特殊枠のプレイブック3つは生き残りやすくなるように意識しています。

 

プレイブックと〔秘密〕、そして学年

色々といじったのは《ムーヴ》よりも〔秘密〕の方かもしれません。

『七不思議(仮題)』の段階では、先ほども書いた通り『Paranormal Inc.』のプレイブックの引き写しで、学年の差異もありませんでした。ですが、何度かこのゲームのテストプレイを続け〔秘密〕の解放で能力値が上昇するのを見るに、「このゲームには経験値的な成長要素はないけれど、〔秘密〕の解放の段階こそが成長なのでは」と思うにいたり、そこをもっと明確に表現しようという気になったのです。で、端的にそこをそのまま使うだけでは能力値の上昇と下降が入ってしまうため、学年を設定して1年生の〔秘密〕は能力値が増えるようにして、3年生の〔秘密〕は能力値が減るけども先に能力値が高くなるようにしました。

当面はずうっと1年と3年の表現だけだったのですが、さすがに2年生が寂しいなぁと思って、発売1ヵ月ほど前に2年生の特殊要素も増やしました。

 

名前

遊びたいと思ったときにちゃっちゃと遊べるように、名前表は重要だと思っています。それでこのゲームにも姓と名前1、名前2を用意しました。姓名で共通するのは、2度目のサイコロで6の目が出たらひねった姓名になることにしようという点です。

姓の場合ですと、1度目のサイコロで6が出たら平家っぽい姓に、2度目のサイコロで6の目が出たらひねった姓になっています。うち、2度目のサイコロで6の目の「時空岡」、「六賢台」、「星界洲」の3つは井上円了由来で、峰守ひろかず『絶対城先輩の妖怪学講座』がモチーフとなっています。

また意識している点では、2度目のサイコロで5の目が出た時の「神野」と「山ン本」は、『稲生物怪録』というよりも朝松健由来ですね。「大階」は、【取材対象】に大きな階段が出てくるので、それに由来して明治創姓で生まれた名字というイメージです。他の姓も、脳内の七裡の町並みを想像した上でこういう姓が生まれるかもな、と考えて作った記憶があります。

名になると、2度目のサイコロで6の目が出たらひねった名は同じですが、それ以外は基本的に、2010年の命名ランキングを参考にしました。上位から、イニシャルがなるだけかぶらないように語頭の音が被らないような名前をピックアップしていった記憶があります。また女の子の名前の方が自由度が高いのかも、と思ったことを憶えています。

あとヴァウェンサ、シモン、ユリアは、外国人の名前も必要だろうと、手元にあったポーランド人の名前一覧を参考にしました。

 

その後の流れ

そろそろ締めくくりでほぼほぼ考えたことはできったのですが、まずは2024月9月3日にハロウ・ヒルのwebページで『えんりょう(仮題)』を公開しました。「えんりょう」というのは井上円了由来のプロジェクト名で、そこから2ヵ月くらいの間に「ほうかご記録」「ほうかご奇録」「放課後きろく」「ほうかご探報」「放課後異譚」「ほうかご異譚」「ほうかご奇譚」「ほうかご奇聞」などなど考えて、11月14日にカクヨムで『ほうかご探報 抄報』を公開し、2024年11月18日に『ほうかご探報 抄報』を販売しました。それらの間のどこかで『ほうかご探報』に落ち着いたのだと思います。

幻ラジオを見られた方々はご存じだと思うのですが、最終的な『ほうかご探報』の編集はカズまさんにお願いしました。その依頼をしたのは2025年3月2日のことでした。しかもその時点でお送りできたのは72ページまでのテキストで、取材対象や町設定、ルールサマリなどはそろっていない状態で、かつ催促されるまではお送りできなかったのは、非常に最低な依頼者だなぁと思わずにはいられません。ただ、ここの部分は人にお願いするのではなく自分で何とかする、と覚悟できていれば、まあ何とかなるところなのかもしれません。

そんなこんなで編集済みのファイルを2025年5月1日にいただき、そこから各ページの隙間を埋めるべく文章を増やしたりして、いつも印刷をお願いしている東京カラー印刷さんに5月6日に発注を行いました。こうして5月18日、無事にゲームマーケット2025春にて販売を開始できたのでした。